【 審査員長賞 】
「医療と卵」
氏名:炭家 優子
卵の殻はゴミにしかならない。幼い私はそう考えていたが、ある日を境に覆った。
それは祖母の家に遊びに行った日のことだ。家は山の中にあって、空気が澄んでおり、土や木々や草花の匂いにあふれている。都会にはない自然の中で走り回り、転んでひざをすりむいてしまい、泣きながら家に戻った時だ。
「おばーちゃん、ひざ痛いぃ~!」
「あらまぁ。ちょっと待ってよ」
祖母はいきなり卵を一つ割り、卵から薄皮をはがして、絆創膏のように傷口へ貼り付けた。驚く私に、祖母は「こうすると治りが早いのよ」とほほえんだ。薄皮が乾いたら貼り替えてを繰り返すと、いつもより早く治った。その時私は、卵はおいしいだけじゃないんだと思い知った。
最近知ったことだが、卵はインフルエンザなどのワクチンを作るためにも使われているという。万能な卵のありがたさをもっと多くの人に知ってほしいものだ。