【 NHK会長賞 】
「文化と卵」
氏名:中川 章治
卵を生で食べる国は日本を含め数カ国ほどで、世界的にも珍しいらしい。
確かに、外国の友人と旅館に泊まった時、生卵をゆで卵と勘違いし、大失敗した彼を大笑いしたことがある。笑われた本人は、卵を生で食べる方がおかしいと、たいそうご立腹だった。習慣の違いを考えると彼の気持ちも分からないでもない。
ただ、卵を生で食べるにはそれなりの、裏づけも必要である。日本で売っている卵の賞味期限は生で食べることを前提にしていて、外国のそれと比べると極端に短い。それは言い換えると、新鮮さを第一に徹底した衛生管理と安全性の上に成り立つ、食習慣でもある。
「管理と安全性」これは卵に限らず、日本がこれまで世界に通じる日本ブランドの象徴として、守り、築き上げてきた称号でもある。「卵の生食」これはまさに、食習慣の違いだけではなく、日本人の身体に刷り込まれた、行動原理の上に見える文化の一角に違いない。