【 読売新聞社賞 】
「文化と卵」
氏名:富田 満
男子厨房に入るべからず、との封建的な家庭に育った小生は、結婚してからも自分で料理をすることは決してなかった。
単身でウイーン駐在となった時、宿泊先のホテルで、コックさんが、オムレツを作ってくれるのを目にした。ベーコン、ハム、マッシュルームなど、小生が指差したものを具にして。フライパンをトントンと叩いて、見事にひっくり返すその技に、思わず(ブンダバー!)と感嘆の声をあげてしまった。
帰国してから、台所に初めて立ち、見よう見まねで、オムレツに挑戦してみた。ベーコンと玉ねぎを先に炒めて。これが、家族に意外と好評で、ウインナー風オムレットと、称されるようになった。
その後、東北単身赴任が、通算十七年の長きに亘っている。東京に戻ったら、今度はみちのく風オムレットを作るつもりだ。具は、リンゴと前沢牛か米沢牛にしてみるか!