【 京急百貨店賞 】
「文化と卵」
氏名:木俣 肇

子供の頃、卵かけご飯は、豊富な栄養の食事であった。それと共に、卵を割りご飯にかける事が一つの文化であった。当時は、今のような出来合いの食材は無く、母の手料理に各種の卵料理。頻繁に出るのが卵のかけご飯であった。まず、お茶碗のご飯の真ん中に箸で穴をつくり、そこにめがけて卵を割って中味を落とす。時々外れて茶碗の端からこぼれそうな時は、あわてて箸で穴を掘る。次第に習熟すると、茶碗のご飯に顔を描けるようになった。目、鼻、口の穴をほり、卵は別の茶碗でといておく。ご飯の顔めがけて、卵を少しずつ落とす。白いご飯に黄色い卵のアートができ、自分の技術に満足して食べる卵かけご飯は格段に美味であった。私のアートを誉めてくれる両親の言葉も食卓を快適にした。これは日本独自の文化である。今の子供たちは親がするので、卵割りアートの機会がない。卵文化の向上と、食卓を家族の団欒にする為に、是非卵かけご飯のアートを勧めたい。