【 横浜ベイスターズ賞 】
「文化と卵」
氏名:渡辺 優子

 「オムレツが嫌いな人なんてないよ」とドイツ人の同僚は言って、タイ風卵焼きのせご飯にケチャップをかけて食べ始めた。私もうなずきながら、同じメニューを食べる。
 タイの卵焼きは、日本人が見たら悲鳴をあげる程の油で揚げるように焼く。好みで肉や野菜や海老を入れる。屋台でも「海老多め」とか「野菜と肉、玉ネギ抜き」とか注文すれば、すぐに自分だけの卵焼きができる。
 タイでも日本同様、卵焼きは子供の定番メニューの一つだ。親が辛いタイ料理を食べる横で、小さな子が卵焼きでご飯を済ませる光景をよく目にする。ということで、赴任したばかりの時は、ドイツ人の同僚も私もよくお世話になった。
 中身はふんわり、外側はかりっとしたタイの卵焼き。私は何年タイにいても、やはり日本の卵焼きを作ってしまうが、タイ人の夫は焼く前にだしを加え、多めの油で上手に和泰折衷の卵焼きを作り、娘に食べさせている。